SCOOP from me and @mizliz_:
The U.S. @TheJusticeDept is probing the @overwatchleague over the league’s soft salary cap and its ‘competitive balance tax’, sources familiar with the probe told @DotEsports.https://t.co/cIwulKM1yf
— Jacob Wolf (@JacobWolf) July 3, 2021
米国司法省の反トラスト法(独禁法)担当部局がオーバーウォッチリーグのソフト・サラリーキャップ制度について調査を開始したとDot Esportsが報じています。
この調査を担当している弁護士はすでにOWLの元従業員数名に接触し聞き取り調査を行ったそうです。調査の中心となっているのがOWLにおける選手組合の欠如であり、組合がないOWLはNFLやNBAなどに認められた組合との合意に基づく「制限的取引慣行」が許されない立場にあります。ドラフトやサラリーキャップといった制度はこの「制限的取引慣行」にあたります。
要するに選手組合がない状態でのサラリーキャップは反トラスト法に抵触するということですが、OWLにおけるサラリーキャップ制度は公には明らかにされていません。大分前にブログでも触れたことはありますが、Richard Lewisがリークしたメモと当時ロンドンのGMだったSusie女史(MonteCristoの奥様)がツィッターでサラリーキャップについて口を滑らせたことでその存在が知られるようになりました。
リーグ関係者によるとサラリーキャップは160万ドルに設定されていたそうで、選手年俸総額がこの額を越えるとチームは超過分を贅沢税としてリーグに支払わなくてはならず、その後キャップ内に収めたチームへと分配されます。この贅沢税はMLBでも採用されているサラリーキャップ制度です。追加の出費さえ惜しまなければ限度額を越えてもOKなことからソフトサラリーキャップとも呼ばれています。
関係者によると、選手本来の市場価格でこの上限を越えずに年俸総額を抑えることができたチームはごくわずかということで、これは多くのチームがキャップを越えないよう適正価格以下のサラリーで契約したことを示唆しています。
選手組合については何年か前に元プロ選手のMorteらが結成に動いていたものの、実現には至っていません。大半の選手が若年層の外国人選手であり、チームの拠点も世界に各地に散らばっているためハードルが高いだけでなく、組合の運営費を捻出することもままなりません。
組合運営費には主にリーグ所属選手のサラリーの一部が充てられることになりますが、来季自分がリーグにいるか分からない不安定な立場に置かれた選手が大半を占める中で十分な運営資金が捻出できるとも思えません。リーグの平均年俸と選手寿命を考えれば払える余裕や意志のある選手は一握りでしょう。
サラリーキャップについていえば、リーグ最低給の5万ドルすら払えるかも怪しいチームが複数ある経済状況では、数年前ならともかく、年俸高騰を抑える目的のキャップ制度を撤廃したところでチームからすれば払いたくても払えないのが実情です。
資金が豊富な中国チームへの戦力偏りを抑えるという意味では将来的にリーグが存続すればキャップの存在意義はあるものの、あってもなくても変わらないのが今の現状かと。現在の選手の市場価格も数年前に比べれば随分と落ちているはずです。
今回司法省が調査に動いた背景にはバイデン政権における反トラスト法に対する意識の高まりがあり、GAFAMといった巨大IT企業がその標的となっています。司法省がOWLのサラリーキャップの存在を嗅ぎつけたのは、内部告発でもあったのか流石と思う一方で、リーグの置かれた現状を考えるとメディアが煽るほど大きな問題に発展することはないだろうと思います。