今回の最新メタリポートは OGN APEX準決勝/DreamHackでのマッチ(11/24~26)を対象に集計されています。
※記事に原文と異なる解釈やおかしな訳があったので訂正しました。各ヒーローの使用率も追記。
今週はDVAのバフと頭角を現してきたロードホッグ、そして不動の位置を譲らないラインハルトの存在によりタンクメタのリポートになると予想されていたが、DreamHackで優勝したのは、Overwatch Openをベイブレードラインナップで制したMisfitsであり、彼らが採った戦術はとてもユニークだった。
DreamHackではNiP、Fnatic、Complexityやその他のチームがAPEX同様にDVA、ソルジャーを中心としたラインナップを採用していた。しかしMisfitsは優秀なタンクでありザリアの世界的な名手でもあるKryw選手が直前にチームを離れたことで、タンクコンプは上手くいかないであろうと悟っていた。彼らは原点に回帰するとともに、サポート役のZebbosai選手がウィドウメーカーを担当し、Soon選手のトレーサーやNevix選手のゲンジを後方から支援していた。このダイブコンプではタンクはSkipjack選手のウィンストン一人だけであった。今回のリポートではまずAPEXとDreamHackのヒーロー使用率を確認すると共に後半でMisfitsが採用した戦術について掘り下げていこうと思う。
THE TIERS
S Tier (>=95% Usage Rate): Lucio (97%)
A Tier (>80% Usage Rate): Reinhardt (88%)
B Tier (>50% Usage Rate): Ana (68%), D.Va (68%), Roadhog (67%), Soldier 76 (56%)
C Tier (>20% Usage Rate): Zenyatta (34%), Zarya (32%), Tracer (26%)
D Tier (>5% Usage Rate): Winston (16%), Genji (14%), Mei (14%), McCree (6%), Widowmaker (6%), Sombra (6%), Reaper (5%)
F Tier (<5% Usage Rate): Hanzo (3%), Pharah (2%), Junkrat (1%), Torbjorn (0%), Symmetra (0%), Bastion (0%), Mercy (0%, actually zero picks, no rounding)
RISING
Zenyatta: +19%
Roadhog: +26%
D.Va: +47%
Soldier 76: +16%
Reinhardt: +19%
DVAとザリアは言わばチョキとグーの関係にあるが、ソンブラパッチで天敵のザリアがナーフされたことでDVAの使用率が急増した。今のトリプルタンクラインナップでDVAは欠かせないピースになりつつある。トリプルタンクの生みの親であるNiPが準決勝でFnaticに敗れた一因には、キャプチャポイント奪取で彼女を使わなかったことにあるかもしれない。FnaticはHymzi選手(NiPのロードホッグ専)のフックからヒットスキャンDPSを隠すために彼らをヴォルスカヤの高台に配置していた。このフックとZappis選手のゲンジだけがFnaticの守備布陣に対抗できる武器だったが、Fnaticは上記の戦術により、このレベルではあまり多いとは言えないポイントAの死守に成功している。FnaticのザリアからDVAへのシフトは高台に位置しているNiPのCoolmatt69、Buds選手を容易に追い払うことができたが、一方でザリアからDVAへの変更を躊躇ったNiPは高台に陣取るFnaticのDPSをケアすることができなかった。
トリプルタンクラインナップでは主にラインハルト、ロードホッグ、DVA、ソルジャーとサポート二人という構成になり、ゲームがはじまるとロードホッグのフックにより戦闘の火蓋が切られることになる。ソルジャーはダメージ強化でDPSの頂点に立ち、マクリーとリーパーをDPSの座から追いやった。優秀なソルジャー使いであれば離れた距離からでもキルを取ることができる。ロードホッグとソルジャーはラインハルトのシールドの庇護の下で最も効果的に機能し、それがラインハルトの使用率にも繋がっている。
この影響で使用率が上昇したのが、現在のメタのカウンターピックとも言えるゼニヤッタだ。ベイブレードが繁栄していた時代のメイと同じような立ち位置と言える。DVAがザリアをトリプルタンクの一角から追いやったことで、ゼニヤッタがカウンターピックとなれたのは、ディスコードオーブがザリアのバリアによって取り除かれなくなったのがその理由となる。メイでもリーパーでもなくゼニヤッタが現トリプルタンクメタのベストカウンターである理由はこのオーブによるところが大きい。ディスコードオーブはキルすべきターゲットの明確なサインとなり、ダメージデバフを受けた相手のタンクヒーローの生存率は著しく減少する。私はトレンドがタンクメタに偏れば偏るほど、ザリアがアウトオブメタにいる限り、ゼニヤッタの使用率は上昇するのではないかと予想している。
FALLING
Ana: -17%
Zarya: -32%
Winston: -19%
Genji: -22%
Reaper: -14%
これらのヒーローのうち少なくとも3人の使用率減少はDVAの台頭が要因と思われる。ザリアは既に述べたが、リーパーはタンク偏重ラインナップでよく使われていたものの、現在のDVA中心のタンクラインナップでは生き残ることが難しくなっている。リーパーは近距離が得意であるため、現タンクメタではロードホッグのフックの餌食になってしまい、無駄にレイスフォームを消費してしまうことになる。リーパーがラインハルト、ロードホッグ、DVAのトリプルタンクを狙っても、DVAはディフェンスマトリックスでUltであろうとショットガンであろうとダメージを吸収することができる。トリプルタンクの中で唯一アーマーのないロードホッグを狙えばフックコンボという脅威に晒されることになる。ウィンストンの巨大な頭部のヒットボックスはDVAのガトリング砲と1対1で向かいあった時に対抗すべき手立てがなく(HSできるタンクはホッグを除くとDVAだけ)、これが使用率低下を招いている。
アナとゲンジについては説明するのがやや難しい。ゼニヤッタの使用率上昇はMisfitsとComplexityが多用したことによるものだが、そのツケはルシオでなくアナに回ってきたようだ。Misfitsのアナの使用率はゼロだった。ゲンジがタンクメタを相手にした時の強みは的の大きいタンクめがけて手裏剣をスパムすることでUltをチャージしやすいといった点だろう。しかし、ゲンジのフランカーとしての能力を引き出すためには、ダイブコンプを実践するためのラインナップが必要となる。Misfits以外にダイブコンプを使ったチームがゼロではないにしても、ゲンジの使用率が下がったことは意外ではない。ゲンジの全体の使用率の1/3はMisfitsが占めていた。
WHOSE META IS IT ANYWAY?
私を含めたオーバーウォッチプレイヤーが「メタ」という言葉を度々口にするが、それはもうほとんど意味を失っているかもしれない。DreamHackへの準備期間中、トリプルタンクメタ相手に戦う中で、Misfitsはメタにはもううんざりだとの結論に達した。チームにはNiPのように優れたタンクプレイヤーが多くいるわけではないが、ワールドクラスのエイマー(Zebbosai選手)、ワールドクラスのゼニヤッタ(Hidan選手)、WCドイツ代表のタンク(Skipjack選手)、フレックス担当の素晴らしいゲンジ(Nevix選手)、Quakeシリーズのかつてのレジェンド(Cooller選手)、そして世界で一二を争うトレーサー(Soon選手)といったタレントを擁している。我々がヒーローの使用率などについて語る中で、個々の実力やチームとしてのパフォーマンスは見落とされることがよくある。Misfitsのようなスキルを持ったチームの戦い方について考察する時、どんなメタなのかを考えることに気をとらわれがちだが、ここでHidan選手のツィートを紹介しよう。
Fuck the meta.
— Mikaël ‘Hidan’ (@Misfits_Hidan) 2016年11月26日
WHAT WAS MISFITS UP AGAINST?
現在のトリプルタンクラインナップはアナ、ルシオ、DVA、ロードホッグ、ラインハルト、ソルジャーという構成になるが、アナリリース前は火力不足と思われていたトリプルタンクもアナの台頭により2/2/2コンプ並のダメージを出すことができるようになった。ザリアとアナのナーフにより、その構成に変化が生じ、ナノブーストはそれまでのラインハルト、リーパーから、強化されたソルジャーとDVAに使われるようになった。ここでは便宜上、このトリプルタンクラインナップをトリプルタンクDS(DVA+ソルジャー)と呼ぶことにする。
トリプルタンクDSではラインハルトのシールドを中心として、もっと具体的に言うとシールドが壊れた瞬間を中心として戦いが繰り広げられていた。トリプルタンクDSのミラーマッチではシールドが敗れる前の戦い方は大きく分けて二つあり、ロードホッグが相手のヒーローを釣り上げるか、ラインハルトを盾にしたDVA、ソルジャー、ロードホッグ(右クリック)が相手ラインハルトのシールド破壊を試みる、といったような形になる。
一旦シールドが破壊されると、戦いは一気にダイナミックになり、ラインハルトは後方のソルジャーのスペースを作るためにチャージを狙う。DVAはバックラインの相手サポートをハラスしたり、高台から相手ヒーローを追い払う。この間ロードホックのフックが常に飛び交う。トリプルタンクDSではアナの単体ヒールとルシオのAOEヒール、そしてソルジャーとロードホッグには自己回復があり、DVAとラインハルトには固い装甲があるため、キルを取ることは一苦労である。実際にトリプルタンクDSのミラーマッチでは自爆とアースシャッターのコンビネーションか、ナノバイザー(アナ+ソルジャー)というUltに頼ることが多かった。トリプルタンクメタを採用しないMisfitsはどのように戦ったのか?
THE MISFITS “SECRIT STRAT”
Misfitsの美しいダイブコンプはこれまでの他のダイブコンプとは異なるため、ここではハイダイブ(High-Dive)と呼ぶことにする。このラインナップでは、Zebbosai選手がスナイプを外したり、Hidan選手がディスコードオーブの扱いをミスしたり、Soon選手のトレーサーが少しでも立ち止まれば、トリプルタンクDS相手に十分な戦いはできなかっただろう。実際に接戦となったファイナルFnatic戦のTemple of AnubisではZebbosai選手のウィドウメーカーが機能せずゲームを失っている。
ダイブコンプを採用したチームはMisfitsのみで、ウィドウメーカーの使用率はウィドウ全体の80%、トレーサーは61%、ゲンジは50%に及んでいる。ハイダイブはゲンジ、トレーサー、ウィンストン、ザリアというトラディショナルなラインナップから、ザリアをウィドウメーカーにスワップしたものだが、戦い方はやや異なる。ダイブコンプでは相手サポートか体力の少ないヒーローを狙い、フランカーが相手バックラインに安全にダイブするための一瞬のスキを作るよう試みる。これまでのダイブコンプではザリアのバリアを纏ったウィンストンのリープがその役目を担っていたが、この戦術は一見キル不可能とも思えるトリプルタンクDS相手にも、サポートからの回復を断つことで有効に機能する。
ハイダイブもこのスペースを作るという点では同じだが、その方法は異なる。ウィドウメーカーがターゲットをスナイプすることでその存在を相手に知らせるが、ウィドウの存在により、相手チームはラインハルトのシールドか物陰でカバーする必要に迫られる。そしてチームはウィドウのスカウティングを頼りに相手サポートに飛びかかっていく。
ハイダイブはトリプルタンクDSのリアクションにも柔軟に対応することができる。もし、相手がDVAでウィドウメーカーをチェックしに来れば、相手チームのサポートへの護衛は手薄になるため、味方のウィンストン、トーレサー、ゲンジが狙いやすくなる。トリプルタンクDS側もハイダイブのサポートを狙いにくるが、DVA、ロードホッグ、ソルジャーではウィンストン、ゲンジ、トレーサー、そしてウィドウによる制圧射撃ほどのダメージをすぐに与えることができない。もしトリプルタンクDSが前に出ず守ることに徹すれば、ウィドウは楽にスナイピングができ、ゲンジはロードホッグのフックの射程外から手裏剣によるスパムでUltチャージを溜めることができる。
この戦術を採用するチームが他に存在しなかった理由はMisfitsほどこの戦術に適したプレイヤーがいなかったことにある。トレーサーはSoon、IDDQD、Surefour選手レベルのプレイヤーでなければ簡単にロードホッグのフックやソルジャーのヘリックスロケットの餌食になっていただろう。ウィドウメーカーがZabbosai選手のレベルになければ相手チームはより長く持ちこたえることができ、ダイバーへの対処もしやすくなる。ゼニヤッタのディスコードオーブが正しいターゲットに乗らなければ、ゲンジとトレーサーが素早くキルを取ることは不可能になる。そしてルシオがスピードブーストのタイミングを誤れば、敵陣に深く切り込んだハイダイバーがバックラインに復帰することはできなかっただろう。
DOES THIS MEAN THE TRIPLE TANK META IS DEAD?
トリプルタンクメタが終わったのかといえば、そうは思えない。しかしながら、我々は「メタ」という言葉が意味することについて再定義する時期に来ているのではないかと思う。メタリポートの目的はプロが何故そのヒーローを使うのかという分析にあり、実際のデータや数字が全てである。私がメタという言葉を使う時は使用率の高いヒーローの一群や、ある一定のラインナップのテンプレートを指しているにすぎない。今週のメタはトリプルタンクDSというソルジャー、DVA、ロードホッグ、ラインハルト、ルシオ、アナのラインナップであったが、DreamHackを制したのはこのラインナップではなかった。トリプルタンクDSがシーズン3での勝利を約束してくれるわけではない。個人のスキルとチームプレーこそがチームが勝つために必要な要素であると思う。ただし、素晴らしいDVA使いが味方にいるのであれば、彼女はチームにとっては有益な存在となるかもしれない。そして、Misfitsのようなハイダイブラインナップをシーズン3で真似しようと思っても、ベストな結果は得られないであろうことは忠告しておきたい。
- 原文のリポートは毎回とても情報量が多いので原則的にティアーリストに的を絞りつつ、所々独断で大幅に端折ってはいますが、大まかなメタの流れを把握できる程度にはまとめてあります。
- このリポートではあくまでもプロシーンにおけるメジャートーナメントを対象としてデータを集計しているので、このリポートがそのままランクマッチやゲーム内でのメタを反映しているわけではありません。
- リポートは作者であるCaptainPlanet氏の個人的な見解が色濃く出ていることもよくあり、また、同氏の見解や意図をこのブログの記事で正確に伝えられていない場合も多々あると思うのでその点については留意してもらえるとありがたいです。
- グラフやリポート中に出てくる”King of the Hill” (KotH) はコントロールマップのことを指しています。