「OWCS DreamHack Dallas Major」出場全8チーム短評

RunAwayとRunnerが紡ぐ物語

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「みんな、これが一緒にファイナルに行ける最後のチャンスかもしれないぞ、悔いが残らないように頑張ろう」

それはチームの今後を暗示する予言でもあった。RunAwayのプレイヤーオーナーであるYoon “Runner” Dae-hoonがメンバーにそう告げた4時間後、OGN APEX Season 2ファイナルに敗れたことでRunAwayのおとぎ話は終わり、チーム崩壊への危機がはじまることになる。

多くのスポンサーが去り、Ryu “Kaiser” Sang-hoonは間の悪いタイミングでCloud9へと去った。チームハウスがないという問題は解決せず、それはメンバー間のシナジーを蝕み始めた。

APEX Season 3では前シーズンのファイナリストであった面影は失せ、多くの人の夢をのせたピンクスウェットをまとった一団の輝きは失せていた。戦いぶりは惨めでチームが思い描いていた夢は無残に砕け散った。RunAwayがグループリーグで姿を消したことに驚く人は少なく、悲しみと将来への不安だけが残った。

その後、RunAwayはコーチを失い、2人の選手がチームを去った。新たなスターチームが台頭したこともあり、良質なスポンサーとの契約チャンスは潰えた。オーナーであるRunnerの収入も大幅に減ることになるが、ストリーマーとして人気のある彼がチームのために時間を費やすことは彼の生計にも打撃を与えていた。

RunnerにとってRunAwayは子供のころから描いてきた夢の実現であり、彼の人生の中で最も貴重な存在のひとつでもある。しかし、チームに尽くす一方で、Runnerは彼の妻と娘、そして残りのメンバーに対する罪悪感を募らせていた。幼い長女の年齢を考えれば彼はもっと多くの時間を家族に費やすべきだったと後悔し、RunAwayのメンバーは環境の整ったもっと良いチームでプレーするに値するだろうとも感じていた。このまま困難な状況を歩み続けるのはあまりにも無責任ではないかと。

そして、Runnnerはひそかにシーンから退き、RunAwayがこれまでに成し遂げた思い出とともに解散を決意することになる。

しかし、それを思い止まらせたのが彼の妻だった。

「メンバーの子達にはまだ最後のチャンスを与えるべきよ」彼女はそう言った。「彼らがRunAwayに留まっている理由はあなたなの。しばらくの間、私達家族が辛抱するということなら気にしないで。チームハウスを見つけて、彼らが必要としているサポートを用意してあげて」

そして、彼らはバスルーム2室と必要な家電一式を備えたアパートメントを賃貸するだけでなく2、スポンサー探しにも今まで以上に精を出し、ついにLogitechからのスポンサードを得ることになった。さらにRunnerはコーチ不在のチームのために、自身がその役割をこなし、それだけでなくチームマネージメントとアナリストとして全力を傾けることを決意する。これはストリーマーとしての彼の収入に大きな打撃を与えることをも意味する。

彼の想いに応えたのがチームメイトでありファンであった。メンバーはチームハウスの家賃支払いを助けるために自発的にボランティアを行い、練習では今まで以上に全力で励むようになった。匿名のファンからは新品の食器洗い器が届けられ、周辺機器メーカーのXenics Creativeはスポンサーでないにも関わらず、ゲーミングチェアーを寄付している。あたかも世界がRunAwayのために一つになったかのようなエピソードだが、これで彼らにとって必要なものは勝利ただひとつとなった。

この新たな環境はさっそく実を結ぶことになる。チームワークは大幅に磨きがかかり、まだ改善の余地は多く残されてはいるものの、X6-Gaming戦ではチームスピリットを見せ、メンバーはSeason 2を彷彿させる輝きを放っていた。チームハウスでの共同生活がはじまって以降の成長ぶりを見れば、今回こそはRunnerと彼の仲間達がおとぎ話を実現させることができるかもしれない。準決勝の相手NC Foxesを倒せば、彼らが待ち望んでいたファイナルに再び到達することができる。それは十分可能だろう。

「正直なところ、Season 2の頃はランクマッチで活躍していたタレントの寄せ集めだった」とRunnerは当時のことをそう話す。「試合は個人のメカニカルスキル頼みだったし、言わばランクマッチでの戦いをしていたようなものだね。でも今は多少ぎこちない時もあるけど、僕らのシナジーは明らかに向上しているよ。チームハウスのおかげで僕らの結束は強まった。ファイナルに進むことも十分可能だと考えている」

Runnerは未だにSeason 3でのチームの戦いぶりを心底悔やんでいる。もし、あのシーズンの失敗がなければRunAwayは今頃はOverwatch Leagueに参加していただろうし、少なくともシリアスなオファーが届いてただろうと彼は言う。しかし、Lunatic-Hai、LuxuryWatch Blue、Kongdoo Pantheraがリーグ入りを決めたことで、新たな韓国人ロスターがこれに続く可能性は狭まったように思える。

しかし、Runnerはまだその希望を捨ててはいない。RunAwayは韓国で二番目に人気のあるチームであり、もし彼らが残されたAPEX Season 4の試合で良いパフォーマンスを見せることができれば、海外のオーガナイゼーションの興味を引くことができるだろう。また、彼はOWLの年齢規定を満たしていないKim “Haksal” Hyo-jongの不在が問題になるとも考えてはいないようだ。

「彼がOWLに出られないということで、僕は既に多くの選手をスカウティングしている。Haksalは素晴らしいプレイヤーだけど、韓国には彼の代わりを務めることができる数多くのプレイヤーがいるからね」

さらに、Runnerはチームでフレックスを担当しているKim “KoX” Min-sooが今すぐにでもトップティアーのDPSとしてプレーすることができるとも話している。

「チームメンバーのメカニカルは世界のどのチームと比べても遜色はないし、それ以上であるとさえ考えている。チームハウスに移ってからの僕らの成長ぶりを見てよ。それ以前のシーズン、僕らは本当に大きな不利がありながら戦っていた。これからも一緒に過ごしていくことを考えれば、僕らはどのチームやロスターが相手でも打ち負かすことができるようになるはずさ。僕らにはOverwatch Leagueに参加するだけの価値があると信じているよ」

今回の記事はESPNのコラムをもとに加筆修正しています。

脚注:

  1. Runaway's Team House!
  2. Runaway’s Team House!
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