ブログでも欄外で指摘していましたが、Jeffからバランス調整のサイクルに関してポストがありました。
鰤のブルコメ史上最も長いコメントではないかと思いますが、このポストの内容に同意できるかはともかく、プレイヤーであれば一読する価値があるコメントではないかと思います。
※いくつか細かいとこですが訂正・追記しました。
”https://us.battle.net/forums/en/overwatch/topic/20757706588?page=2#post-24”私はこれまで、最近のメタ事情や事態を複雑にする「性急な」バランス変化を要求する意見に関したフィードバックを読んできた。ここで個人的な見解ないし視点を示そうと思うが、私はいくつかの理由で少しナーバスになっている。例え私がゲームディレクターであり、OWのスポークスマンという立場にあるとはいえ、独断で決定を下すことはできないし、私はオーバーウォッチチームという素晴らしいチームの一員にすぎない。チームの全員が私の意見に同意するわけではなないし、ゲームの置かれた現状やゲームバランスについてはそれぞれ異なる意見を持っている。我々の中には本当に多くの異なる考察や見方が存在するが、我々は何度でも話し合っている。そして、我々の意見が常に一致するとは限らない。だから、このポストが「公式見解」ではないことを理解してもらった上で、あくまでも個人的な見解から意見を述べていることを何よりも先に述べておきたい。
私がここで述べることで、最も議論を呼ぶであろうことは、私がこのゲームは現在もバランスが取れていると考えていることだ。私が言いたいことは、ゲームバランスを崩すほど強すぎるヒーローは存在しないということであり、いくつかの問題を抱えているヒーローが存在しないと考えている訳ではない。ロードホッグのワンショットコンボを削除したことは必要なことであったと考えているが、だからといってロードホッグの置かれた現状に納得している訳でもない。さらにマーシーのリザレクションについても様々な意見を出し合って考える必要があると考えている。このアビリティはとてもパワフルでマーシー本人や相手チームにとっても楽しいスキルとは言えない。だからといってこれでゲームが崩壊するわけではないし、ゲームブレイキングな問題でもない。この問題のせいでゲームがダメになることはないし、問題は徐々にそして慎重に修正されていくだろう。ここであげた問題はあくまでもそういった問題の一例にすぎない。
私がこのゲームはバランスが取れていると考えるのは、例えば統計的に最もアンバランスなヒーローは君たちが考えているヒーローとは異なる。シンメトラとトールビヨンの勝率はとても高くこの事実を持ってすればバランスが取れているとは言えない。しかし、現時点ではコミュニティからトールビヨンとシンメトラが「オーバーパワード」であるとする怒りの声は聞こえてこないようだ(少なくとも統計的には彼らはOP)。我々が統計のみを頼りにバランス調整をしないのもこういったことが理由にある。
先週私がコメントしたように、ヒーローのバランスについてコミュニティが感じている認識そのままにバランス調整をすると、実際には思っていた以上の影響をゲームにもたらすことがある。
私はコミュニティの膨大なフィードバックをこのような形で要約してしまうのは好きではない。それは多くの人々に対してアンフェアだと考えている。人々が感じている本当の問題は人々が望んでいるほどにメタが頻繁にシフトしていないことであることは理解している。プレイヤーはプロシーンを参考にしてからそれらを自身のプレーへとトリクルダウンさせていき、フィードバックのほとんどがそれらのピックレートに基いているように思う。プロシーンではチームがヒーロープールの一部のみを使うことに慣れきっていることは事実だ。ランクマッチでもハイレベル帯(ここでは全体の1/3とする)では徐々にトップシーンの状況に追い付くという現象を観ることができ、そのラグは数ヶ月とまではいかないが数週間ある。ハイレベル以外のプレイヤー…プレイヤーの大多数…はこういったメタに沿ったプレーはしていないが、コミュニティでの議論やプロシーンの観戦を通してメタの存在については認識している。
メタが変わるためには様々な方法があると思うが、ここでは主に3つにまとめてみたい(現実のスポーツではなく少なくともゲームにおいて可能な方法)。①いくつかのバランス変更。②プレイヤーによる新戦術の考案。③ゲームのシステムを通してメタを強制的に変える。
これら3つについて…
私はゲームのバランスが取れていない時やいくつかのバランス調整を入れる必要がある時のみ、メタがシフトすることを好んでいる。それ以外の方法で、メタをシフトさせることだけを目的としてバランス調整すべきというフィロソフィーについては同意しかねる。開発チームはコンスタントにバランスについて検討すべきであるし、ヒーローがアンバランスで、必要があるなら変更を施すべきである。しかし、ピックレートが高いから、または低いからという理由だけでヒーローに変更を施すということはゲームバランスに責任を持つ私の頭の中にはないことだ。今のシンメトラのピックレートはとても低い。彼女に変更を加えて「マストピック」にすることはできるだろうが(そしてメタもシフトする)、私は彼女がメタに復帰したとしても、むしろそのことで彼女のバランスが取れていないのではないかと心配になる。要約すると:アンバランスなヒーローのバランス調整は問題ないが、ピックを増やすため、ピックを減らすためのだけのバランス調整は好ましくない(これはあくまでも私の意見)。
プレイヤーが新たな戦術を考え出すことでメタが変わることについてだが、これがメタがシフトする上での理想的なケースであると考える。我々はこのケースを何度も目にしてきた。これらの多くはプロトーナメントの中で発生し、その中でチームは新たな戦術と戦い方を提示してくれる。トリプルタンクが一世を風靡した理由がまさにそれである。既存のメタから革新的なメタを生み出すことはとても難しい。プレイヤーにはクリエイティブなプレイヤーもいれば、作戦を遂行するために優れたプレイヤーもいる。そういったプレイヤーが揃っても、プレイヤーレベルの差に関わらず、革新的な戦術を見つけるために時間を割くことは容易ではない。プロプレイヤーのスケジュールは忙しく、独創的で新しい戦術のために練習を割くことは簡単ではない。大会のスケジュールがハードであれば尚更である。しかし、それらを全て踏まえた上で、個人的には、プレイヤーのイノベーションによりメタがシフトすることが考えうる限り最高の結果であると考えている。
最後にゲームのシステム(メカニクス)を変えることで強制的にメタをシフトさせるケースについて。MOBAは非常に多くのヒーロープールが用意されているが、ピック&バンなしではどのチームも同じコンプを繰り返しプレーすることになる。MOBAではピック&バンというシステムを通して強制的に多様性をもたらしているともいえる。オーバーウォッチでも同様のシステムを採用することはできる。特定のヒーローを一時的にもしくは完全にバンさせることもできるし、君がプレーを望むヒーローを相手が阻止できるようにすることも可能だ。さらに君にプレーしたくないヒーローのピックを強制させたり、相手にもプレーしたくないヒーローを強制的にピックさせることも可能だ。個人的にこういったシステムはオーバーウォッチには馴染まないと考えている(MOBAがこのようなシステムを採用する理由は十分に理解しているが)。自由に何かを工夫することを認めることと、工夫せざるを得ない状況を作り出すことは違う、私はそのように考えている。私は世界最高のゲンジ使いがザリアをプレーするところは見たくない。彼がゲンジをプレーしている姿を見たい。そして、どれほどのプレイヤーが好きなヒーローをメインにしているかを見てみたい。私は彼らが望むヒーローをプレーすることを認めないシステムは望んでいない。
我々は最近6v6 Eliminatioモードをアーケードに追加した。このモードはクイックマッチやランクマッチでも十分に機能するモードだと考えている。このモードもシステムにより強制的にピックレートとチームコンプの変化を引き起こしているよい例といえる。このモードで勝利チームは18人のヒーローをプレーする必要があるが、仮にランクマッチでこのモードが採用されたとしたら、メタは、プレーされる18人のヒーローはほぼ固定で、残る7ヒーローが使われることはまずないだろうと思う。何度も言うが、これがゲームの終わり、世界の終わりだとは思わない。それが(メタが停滞するということが)現実であるということだ。
進化や発展が遅い、もしくは長期間停滞しているメタを伴うゲームだからといって、そのゲームのバランスが取れていない、もしくは面白くない、観ていてつまらないということではない。ほとんどのプロスポーツがこれに当てはまる。TF2は主にDemo/Medic/Scout/Scout/Solider/Soldierがプレーされていたが、そういったプレーが受け入れられていたし、プレーしても観ていても楽しいものだった。ベースボールはどのチームも4番に最高のバッターを並べているが、だからといってベースボールが見るに耐えなく、衰退しているわけでもない。
しかし、そういった比較はここにいるプレイヤーの期待を無視しているように見えるかもしれない。あらゆるマッチで25人の全てのヒーローがどのような状況でも使えれば、というプレイヤーの望みは理解しているし、私も同じことを考えている。現実問題としてゲーマーであれば、AというヒーローがBというヒーローよりも有利であるとプレイヤーに認知されたら(実際にそれが有利かどうかに関わらず)、彼らは常にBではなくAをプレーするべきものだと考えてしまう。オーバーウォッチのプロプレイヤーはBが1%でもAより強いと考えればAをプレーすることはない。ヒーロー(の性能)が均等になるようにバランス調整することは可能だが、ほんの僅かでも何れかのヒーローに優位性が感じられれば、そういった調整は意味がなくなってしまう。
現在メタとして認知されているものについて考えてみよう。「ダイブ」が重要な戦術であることは明らかだ。正確には、これはプロフェッショナルシーンで使われている重要な戦術である。オーバーウォッチで多くのプレイヤーはクイックマッチを中心にプレーしている。クイックマッチで最も多くプレーされている上位6人はゲンジ、ソルジャー、ハンゾー、マクリー、マーシー、ジャンクラットだ(先月分のデータ)。統計的にはプロでもなくランクマッチもプレーしないプレイヤーがオーバーウォッチの大多数を占めるが、そういったプレイヤーにとっては今挙げた6人がメタと言える。
こういった統計をポストすると、知りたいのはクイックマッチではなく、ランクマッチのデータだとプレイヤーたちは憤慨する。私がクイックマッチのデータをポストすることで指摘したいことは、大多数のプレイヤーが一般的に認知されたものとは異なる体験をしているということだ(一般的に認知されているメタとゲーム内のメタは違うということが言いたいのかな?)。では、ランクマッチのデータを見てみよう。上位6人はマーシー(大差を付けて)、ソルジャー、DVA、ルシオ、アナ、ゲンジだ。興味深いことに7位はラインハルトでその次はウィンストンではなくロードホッグだ。これは先月のデータで君たちが実際にプレーしてきたデータだ。
エリートプレイヤーについても触れておこう…これはMMRで全体の1/3に位置するプレイヤーのことを指している。先月のトップヒーローはそう、アナだ。
私は君たちがダイブメタに疲れ切っているという事実を軽視しているわけではないが、より現実的な視点からこの問題を見て欲しいと考えている。ダイブそれ自体はとても興味深いコンポジションだ。プレーするのは楽しく観ていても面白い。ダイブメタでは高いスキルを要求するヒーローが活躍している。トップゲンジやトップトレーサーを観るのはとてもファンタスティックだ。私自身、ダイブコンプは悪いものとは考えていないが、プレイヤーがダイブだけではなく他のコンプも望んでいることは理解している。私もそれが実現して欲しいと考えている。しかし、それは強制的ではなく、プレイヤーの誰かを傷つけずに実現すべきである。私はヒーローのピックレートを変えるためにバランス調整という名のグレネードを投げる入れるべきであるとは考えていない。長期的に見ればプレーしたいヒーローを強制的に制限したりするようなこともゲームのためになるとは考えていない。そして、コミュニティが要求している急激な変更についても慎重になる必要があると考える。数ヶ月前にDVAをナーフしたが、その時に彼女はもう二度と使いものにならないとDVA使いの怒りを買った。彼女をバフしろというメガスレッドがいくつも立った。我々は彼女の性能は問題ないと考えていたためにDVAに対する考えがブレることはなかったし、彼女の性能にそれ以上手を入れることもなかった。今の彼女はダイブメタにおいて重要なヒーローとして存在しバフする必要性は見当たらない。
プレイヤーはヒーローに変更を加えるたびにバフを意図したものか、それともナーフを意図したものかとばかり考えるが、ヒーローの変更はほとんどがゲームをよりよくするために行われるものであり、ロードホッグの変更でもそれは同じことが言える。目標は彼のナーフではなく、我々も彼のナーフは意図していない。我々が意図していたのはプレイヤーベースで「好ましくない(”not ok”)」とされた挙動…つまりワンショットコンボを取り除くことにあった。多分ホッグに関しては再調整の必要があるかもしれない、おそらくは。このホッグの例はあくまでも全ての調整が黒か白か(バフになるのかナーフになるのか)で語られるべきではないということを示すための例え話にすぎない。グレーな部分が存在することでゲームのフィーリングがよくなることもある。時には(コミュニティの意見を無視してでも)我々の考えや立場を維持する必要があり、劇的な変化をもたらさずに済むこともある。
このポストには多くの反論があるであろうことは理解している。ダイブコンプに消えてほしいと願っている人の一部は、ウィンストンとDVAを徹底的にナーフしない限り納得しないであろうと思う。しかし、我々はそれに応じるつもりはない。ヒーローのバランス調整はそれが必要とされるときに行い、そして、君たちが考えている以上に頻繁に調整を行っている。今から3ヶ月後そこには新たなメタが登場しているであろう(3ヶ月後てw)。もし君が2週間に一度のペースでメタはシフトすべきと考えているタイプの人間なら、その時は、そのメタにはもう飽きて、古き良きダイブコンプ(つまり今のダイブメタこと)を懐かしんでいることだろう…変化のための変化を期待している人に対してはそう警告しておくよ。The meta will shift soon enough(メタはすぐにシフトするだろう)。
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最後の一文のsoonは™が抜けてますねw
あまりにも長いせいで論点がぼやけてしまっているように思うけど、要はメタを変えるためだけのバランス調整はしないということですね。ヒーローのバランス調整に不均衡や問題があれば手を入れるけど、ピックレートが高すぎるから、低すぎるから、そういった理由でバランス調整はしないということです。
コミュニティとしては正直なところ、限られた今の既存のヒーローで理想的なメタのシフトを実現することや誰もが納得できるようなバランス調整はもう諦めてるというか、やっぱり鰤では無理だなということに気づきはじめている。
だから、コミュニティとしては新しいヒーローを可能な限り早く、多くリリースすることで、少しでも多様性を広げてメタが自発的に(プレイヤー側のイノベーションで)動く可能性を広げて欲しいと考えているわけだけど、残念ながらJeffからそれに関する考えは一切聞くことはできなかった。このスレッドのテーマがあくまでバランス調整に関するものだったから仕方ないけどね。
今回のテーマではなかったけど、バランス調整でプロシーンの意見をどの程度汲み取るかもこのゲームがesportsシーンで成功する上で欠かせない論点であるはずだけど、そういったことをどこまで考えているのかも気になる。コメントを読む限り大多数を占めているらしいカジュアルユーザーを重視しているように思えなくもない。
Jeffは3ヶ月間このままダイブメタが続いても問題ないと本気で考えているんだろか。JeffのコメントからはOWのesports的側面についてどのように考えているのかがまるで伝わってこない。というかむしろ、esportsに開発のフィロソフィーが左右されることを嫌うような印象さえ受ける。
とはいえ、Jeffが最後に言っているとおり、このポストには反論の余地がいくつもあると思うし首を傾げたくなる部分も多々あるけど、少なくともここまで真摯な姿勢でコミュニティに対してコメントした鰤の開発者は自分が知りうる限りJeffがはじめて。ガス抜きと言われればそれまでだけど、D3ではそれすらなかったからね…そこは十分評価に値すると思う。