今年7月にカリフォルニア州による訴訟で明るみとなったActivision Blizzardのセクハラ問題ですが、国際的な影響力を持つ経済紙ウォールストリートジャーナルは、同社のCEOであるボビー・コティック氏は州当局が調査を開始する何年も前から社内でのハラスメントや虐待の存在を知っていただけでなく、それらの報告を積極的に隠蔽し告発されたリーダーを庇っていたと報じています。
An employee at an Activision videogame studio reported being raped by a supervisor. CEO Bobby Kotick didn't tell the board. https://t.co/qXkhHrDCQ6
— The Wall Street Journal (@WSJ) November 16, 2021
これまではBlizzard社内でのハラスメントや差別問題に焦点があてられていましたが、今回はActivision傘下のスタジオにおけるセクハラ/暴行事件やコティック氏本人のハラスメントも報告されており、これまでにも増して同社の立場を危うくする内容となっています。以下、WSJの記事のまとめとなります。
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– 長年に渡り、コティック氏自身がActivision社内外で複数の女性から不当な扱いを受けたと訴えられており、コティック氏がそうした訴えを迅速かつ穏便に解決するために働きかけていた。
– 2006年、コティック氏はアシスタントの1人にハラスメントを行ったとされており、ボイスメールでは彼女に「殺してやる」などと脅していたという。2007年には自身のプライベートジェットのパイロットによるセクハラ被害を受けた客室乗務員の女性に対して「破滅させてやる」と話したとされている。同社広報にとると、2006年の事件についてコティック氏は即謝罪しており、2007年の発言についてもコティック氏が否定しているが、このパイロットによる乗務員へのセクハラは法廷闘争にまで発展しニュースにもなっている。
– 2020年、Activisionのesports部門に所属する30名の女性職員が望まないスキンシップ、屈辱的なコメント、容姿に関する発言、重要な会議から排除されるなどを理由に同部門の部長に苦情のメールを送ったとされており、コティック氏もこのメールの存在を認識していたという。
– Blizzard社内における新たなセクハラ問題も掘り起こされており、2018年に社内調査の結果解雇された技術部門責任者のBen Kilgore氏は、複数のセクハラ疑惑が存在する中で、当時のCEOであるMichael Morhaim氏から長年の貢献に感謝する旨のメールを受け取っていた。
– Activision傘下のSledgehammer Games(CoD:Vanguard開発)の元スーパーバイザーであるJavier Panemeroは1人の女性に対するレイプと別の女性へのセクハラで告発されている。暴行を受けた女性は2017年に退社するまでに人事に被害を報告していたものの、会社側はこの女性の弁護士が介入するまで疑惑の調査に動かなかったとされている。その後、Activision社は被害女性と和解したものの、コティック氏はこの事実を取締役会に報告していなかったとのこと。尚、同社は既に社内でのハラスメント問題を適切に投資家に開示しなかったとして、米証券取引委員会から調査を受けている。
– 同じくActivision傘下のTreyarch(CoD:BOCW開発)の共同代表を最近まで務めていたDan Bunting氏は2017年、夜一緒に酒を飲んだ同僚女性へのセクハラで告発されている。その後、調査の結果解雇を通告されたにも関わらずコティック氏の介入によりカウンセリングを受けることで決着がついたという。
追記:
– セクハラ訴訟の中で明るみとなった女性職員の自殺1について、取締役会はこの事実をコティック氏から知らされておらず、これについて同氏は、問題は専らBlizzard側に集中しており、その問題は数年前に解決したと話していたという。
– セクハラ騒動を受けてBlizzardの共同社長に就任したものの、僅か3ヶ月で退社したJen Oneal女史は、もう1人の共同社長であったMaike Ybarra氏よりもサラリーが低く、在任中は「軽んじられ、疎外され、差別されている」と感じていたという。アジア系アメリカ人で同性愛者でもあるOneal氏は「会社側に正しい形で社員を優遇する意思がないことは明白である」と法務部門のメンバーに伝えていたとのこと。
– WSJの記事が公開された直後、Activision Blizzardはコティック氏の署名で声明を発表。その中で、リポートは不正確で同社、氏個人、そのリーダーシップに対する誤解を招くものであるとして、取締役会はコティック氏の留任と同CEOへの信頼を強調している。
We have instituted our own Zero Tolerance Policy. We will not be silenced until Bobby Kotick has been replaced as CEO, and continue to hold our original demand for Third-Party review by an employee-chosen source. We are staging a Walkout today. We welcome you to join us.
— ABetterABK 💙 ABK Workers Alliance (@ABetterABK) November 16, 2021
– 一方、一連の不祥事発覚後に待遇改善を求め同社内での抗議活動を続けていた従業員グループABetterABKは、コティック氏の解任と第三者機関による調査実現を求めて本日再びストライキを行うことを明らかにしている。
ayy lmao#ABetterABK #actiblizzwalkout pic.twitter.com/MxSza0erLV
— Nora Valletta 💙 (@NoraValletta) November 16, 2021
– アーバインにあるBlizzardのHQキャンパス正門前には続々と従業員らが集まっている模様。尚、Activisionのオフィスはそこから60kmほど離れたサンタモニカにあります。
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コティック氏は先日、自身の高額なサラリーを全額返上し、関連団体への寄付に回すことを明らかにしていますが、今回のWSJのリポートを見る限り、それだけでは収まりそうもない事態に発展しているようです。
”https://kotaku.com/blizzards-first-woman-co-head-resigned-due-to-being-tok-1848066667””https://kotaku.com/report-activisions-bobby-kotick-didnt-just-know-he-al-1848066600””https://kotaku.com/calls-for-bobby-kotick-s-resignation-intensify-as-emplo-1848067513”