[Overwatch] 最新メタリポート(12/20)‐MLG Vegas / IEM Gyeonggi

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今回の最新メタリポートは MLG Vegas/IEM Gyeonggiでのマッチ(12/16~18)を対象に集計されています。

今週はIEM GyeonggiとMLG Vegasというふたつのプレミアムトーナメントが開催された。リワークされたシンメトラがリリースされて間もないためにメタの動向に注目が集まっていたが、既に兆しを見せていたタンクメタはプロシーンでも盤石になり、先週のリポートではティアートップの6ヒーローのうち4人がタンクだった。シンメトラのリリースを待って決断を下そうと思っていたが、今回のデータを考慮してもタンクメタは完全に定着したと言ってよい。

TIERS

S Tier (>=95% Usage Rate): No one!

A Tier (>80% Usage Rate): Reinhardt (90%), Lucio (89%), Ana (86%)

B Tier (>50% Usage Rate): D.Va (73%), Roadhog (64%), Zarya (51%)

C Tier (>20% Usage Rate): Soldier 76 (36%), Tracer (21%)

D Tier (>5% Usage Rate): Mei (14%), Zenyatta (14%), Genji (13%), Winston (10%), McCree (7%), Pharah (6%), Reaper (6%)

F Tier (<5% Usage Rate): Symmetra (4%), Sombra (2%), Mercy (1%), Torbjorn (1%), Hanzo (1%), Widowmaker (0%), Junkrat (0%), Bastion (0%)

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タンク偏重な現状のメタに幻滅している人もいるかもしれないが、ヒーローの使用率に関して、ひとつ画期的な変化が起きている。これまで随分と長い間トップティアーに君臨していたルシオがトップの座から滑り落ちている。ルシオの使用率が落ちた原因はシンメトラのリワークにある。依然としてルシオはコアヒーローの一人ではあるものの、ファーストポイントの防衛でシールドジェネレーターを使うチームはルシオを外していた。そして、このラインナップを上手く運用したのがMLGに出場したEnVyUsとCloud9だった。ザリアも変化が顕著だったヒーローの一人で、先週からピックレートを約10%、一ヶ月前からは約30%ほど数字を伸ばしている。ザリアが使用率を伸ばした分、ソルジャーはその煽りを受けてここ1ヶ月で20%近く使用率を落としている。またトレーサーも今週だけで13%ピックレートを落としている。

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先週シンメトラが及ぼすであろう影響について大まかに二つのシナリオ…タンクメタに変化をもたらすか、もしくはタンクメタを加速させるかのシナリオを想定していたが、結果としてはその中間に落ち着いたと言える。シンメトラを運用したチームはベータ時代に彼女が猛威を奮ったマップ(Dorado、Numbani、Hollywood、King’s Row)で彼女を出してきたが、Cloud9やEnVyUsといったチームはファーストポイントの防衛ではルシオのスピードブーストよりもシンメトラのシールドジェネレーターを評価していたようだ。

シンメトラを運用していたチームはMLG/IEM前にPTRで彼女を研究練習する時間があったチームか、ベータの頃の彼女のプレイスタイルを熟知しているプレイヤーが存在するチームのどちらかであった。後者はInternetHulk選手が所属するnVで、準決勝Cloud9戦のDoradoでは、C9のSurefour選手操るトレーサーのフランクを警戒したInternetHulk選手が可能性のあるフランクルートに設置制限が緩和されたタレットを仕掛けていた。IEMとMLGでシンメトラを運用していたチームはファーストポイントの防衛率が高く、Numbani、Dorado、Hollywoodでは1Pの防衛率が全体で32%であったのに対し、シンメトラを出した場合は47%であった。

シンメトラは非常に強力ではあるものの、期待されていたほどではなかったように思う。DPSヒーローをタンクに仕立てあげることはできなかった。しかし、シールドジェネレーターはハイブリッドマップのファーストポイント防衛ではとても強力なツールであり、オフェンスに比べてディフェンスではスピードブーストの必要性が薄いためDPSもしくはタンクを変えるのではなくルシオの代わりに彼女を入れることになる。シンメトラ編成においてもタンクは3人いるので、シールドジェネレーターがアクティブになるとオフェンスチームがポイントを奪取できる可能性は著しく落ちる。

シンメトラの使用率は全体で見れば低いものの、彼女は復活したと言えるのではないか。ハイブリッドのファーストポイントで最も力を発揮するというニッチな需要によりシンメトラのピックレートは今後も1~10%程度ではあると思うが、それがランクマッチで彼女を使わない理由にはならないだろう。ランクマッチの成績を上げたいのであれば、ファーストポイント防衛で彼女をピックすることを薦めるし、当然2CPマップにおいても同じことが言える。シールドジェネレーターをタレットで守ることで、相手チームが破壊するためのリソースを増やすこともできるが、グランドマスター未満のティアーでこれを簡単に破壊できるチームはそう多くないと思う。

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MLGにおけるコンポジショントップ5が今のメタの現状を物語っている。今のメタでは5人のコアとなるヒーローが存在し、6人目の枠に入り込めるのはフレックス枠の2人のヒーロー(ザリア、ソルジャー)か、タンクカウンターとして機能する3人のヒーロー(メイ、ファラ、ゲンジ)のうちのいずれかということになる。

MLGにおけるコアヒーロー5人は、アナ、DVA、ルシオ、ラインハルト、ロードホッグとなる。残された1枠で最も使われているのがザリアで次がソルジャーとなる。ソンブラパッチリリース後は強化されたソルジャーのコンプ派生が最もポピュラーだったが、プロチームは「ナノバイザー」が容易に相手チームのDVAによりシャットダウンされるなどの理由からソルジャーの使用率はディフェンス時を除き徐々に落ちていった。ディフェンス時にはソルジャーを味方チームが陣取る位置から離れた場所に置くことで、相手チームに対し火力のあるソルジャーをフリーにさせないようDVAでチェックしにいくのか、敵本隊に向かうのか選択を迫ることができる。決勝でFaze Clanが選んだのは後者だったが、おかげでHarryHook選手のソルジャーは自由なポジショニングから相手チームを撃つことができた。

ディフェンス面では強みを発揮していたソルジャーだったが、オフェンスやKotHでは使用率を徐々に落としていき、その座はザリアに譲ることになる。DVAの使用率が急上昇するにつれてそのカウンターとなるザリアも再びフレックスの座に戻ったが、ザリアはソルジャーにできなかったことが可能でディフェンスマトリックスを貫通できる数少ない攻撃を有している。しかしながらザリアであってもDVAの完璧なカウンターとはなりえない。その理由は決勝でMickie選手が見せた「グラビトンサージ喰い」で、トップレベルのDVA使いは常にグラビトンサージを呑み込むことを狙っている。

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MLGでタンクメタのカウンターとしてはっきりと認識することができた3つのランナップをあげてみると、そのどれにしてもトリプルタンク構成であり、トリプルタンクコンプに任意のフレックスを入れている構成にすぎない。そしてトリプルタンクのカウンターとして最も使われたクアッドタンクもその派生と言えるが、タンクメタのカウンターがタンクコンプという時点で2/2/2コンプの終焉を意味しているのかもしれない。

Mei

まず3つのうちひとつはロードホッグの代わりにメイを入れたラインナップでコントロールポイントで使われる。的の大きいタンクはフリーズさせやすく、ディフェンスマトリックスで吸収できない凍結ブラスターはDVAのカウターにもなる。メイはロードホッグのフックを喰らっても生き残れるノンタンクヒーローでもあるため、味方ザリアがバリアをサポートヒーローに回せる余裕も生まれる。さらにアイスウォールは相手アナの射線(LoS)を遮ることで回復を防ぐこともでき、この他にも相手チームを分断するためのユーティリティ性能が高い。

Phara

ファラをフレックスに入れたラインナップは当初FnaticがFaze Clan相手に使用していた。Fnaticはそれまでの戦いの中でロングレンジからヒットスキャンを狙えるラインナップが少ないことに気づき、空中で自由を得たファラをHafficool選手に任せることで、同選手の優れたプロジェクタイルスキルを活かしていた。Hafficool選手にとって「ゼロ射程コンプ」はロードホッグのフックにさえ注意を払えば空中はほぼ安全地帯と言えた。しかしながら、Faze側もソルジャーを出したりファラを出すなりしてこれに対抗していた。Fnaticの戦術はファラ使いにとって、ランクマッチでクアッドタンクを相手にした場合などで希望の持てる戦い方と言えるかもしれない。

Genji Ringer

最後はFazeが見せたShadowburn選手のゲンジだ。ランクマッチにおいて、チームの強みを活かすことがしばしレートを上げる鍵になるが(※ただし野良を除く)、世界最高のゲンジを有しているチームでもそれと同じことが言える。Shadowburn選手のゲンジが「ナノブレード」を実行する際の手順は毎回ほぼ同じで、まずゲンジがハイグラウンドへとダッシュすることでRawkus選手のアナにLoSを与え、更に間違った味方にナノブーストがかかるのを防いでいる。ナノブースト化したゲンジはサポートを真っ先にキルし、サポートを失った相手チームは一気に弱体化する。机上の理論とも言えなくもないが、もしメンバーに優れたゲンジがいるのであればShadowburn/Rawkusデュオの動きを真似ることはとても有効ではないかと思う。

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タンクメタの問題点

体力の多いタンクはDPSに比べて火力が低く有効射程も短いはずと考えるのが共通認識であると思うが、ラインハルトのハンマーはルシオのスピードブーストのおかげでいち早くメレーレンジに入ることができ、強化されたDVAはマトリックスを駆使することでソルジャーとデュエルすることも可能になった。ナーフされたザリアもDPSに匹敵するほどの高エネルギーを維持している。Coolmatt69選手やHarbleu選手のようなトップクラスになれば未だに70%以上のチャージ率を常に維持している。

体力の多いタンクはマクリーでHSを2回決めても倒せないが、これはアナのようなバーストヒールを有しないヒーラーを前提とした場合であればバランスが取れいている。しかし、回復グレネードとロードホッグのような自己回復があれば、2回のHSも虚しく体力はすぐに元通りになってしまう。そしてその過程でアナはUltのチャージを効率的に溜めることもできる。グレネードをなくすか、その性能を抑えればこういった問題は起こらない。

タンクメタと対峙した時になぜリーパーを使わないのかという声がよく聞かれる。彼はたしかに理論上はタンクのカウンターであり、ショットガンは的の大きいタンクには有効だ。しかし現メタでは3ないし4タンクがリーパーを待ち受けている。近距離が得意なリーパーはロードホッグのフックの餌食となりレイスフォームで逃れるしかなく、DVAとザリアはディフェンスマトリックスとバリアで咄嗟の防御手段を有している。ラインハルトはシールドだけでなく、アースシャッターでデスブロッサムを阻止することもできる。防御手段のないロードホッグにいくら弾丸を叩き込んでも自己回復とアナのグレネードで瞬時に回復してしまう。

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リーパーがタンクメタの最適解ではないことを述べてみたが、一方でEnVyUsはリーパーを運用することでFazeのタンクメタを封じ込めることに成功している。これはある種の「タンクバスター」になりえるかもしれない。nVがリーパーを出した理由は数週間前に比べてザリア、ロードホッグ、ウィンストンといった「アーマーレス」なタンクが増えたことが影響しているのかもしれないし、決勝マップのNepalやAnubisがリーパーに向いていたのかもしれない。

今後メタがよりタンク志向になればcompLexityが採用していたメイ派生のラインナップやFazaやFnaticのようなファラ派生がより勢いを増すだろう。いずいれにしても自ら考案した戦術を成功させ、相手を圧倒した者が「メタを制した」と言えるのはでないだろうか。

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