『OWCS KOREA ステージ2』観戦ガイド

[EWC]『Esports World Cup – Overwatch 2』決勝グランドファイナル ミニレポート-「ヒーローBAN」はOW競技シーンの未来となるか?

大会情報

本日、『Esports World Cup – Overwatch 2』は大会最終日となるグランドファイナル決勝を終え、OWCS Dallas Majorの覇者CRAZY RACCOONが「4-1」でTORONTO ULTRAを下し、オーバーウォッチ世界大会2連覇を達成しています。

以下、最終日に行われた3試合のミニレポートと、今大会で独自採用された「ヒーローBAN」システムの感想になります。

準決勝第1試合

  • CRAZY RACCOON [4-1] TEAM FALCONS

序盤は過去3大会で頂点を争ってきた両者の戦いに相応しい接戦となりましたが、FLCNはStalk3rとFielderを中心に1マップこそもぎとったものの、試合が進むごとにCRの試合巧者ぶりが目立つようになりました。アイヘンバルデでFLCNのC9を誘発したローテーションや、試合を決めた土壇場でのLIP十八番のソンブラはCRの試合運びの上手さを象徴していました。圧倒的ともいえる個の力は言うまでもなく、チームとして完璧に機能しないかぎり、CRが今のような絶対強さを手に入れることはなかったと思います。

一方のFLCNは個々の能力ではまったく引けを取りませんでしたが、今回も「あとひとつ」が足りないことを痛感させる試合内容でした。しかし、そのあとひとつはとてつもなく大きいような気がします。Properはまたしてもビッグタイトルに手が届きませんでしたが、偉大なる先輩レジェンド「無冠の帝王」Carpeにちなんで、”Carpe 2.0″という有り難いようなそうでもないような称号を得ています。

準決勝第2試合

  • ZETA DIVISON [3-4] TORONTO ULTRA

フルセットの第7マップまでもつれた今大会で最も激しい一戦となりました。両者ともに選択したマップを勝ち取ったことからわかるように、どちらが勝ってもまったくおかしくない試合内容でしたが、SomeoneとMer1tのダブルエースに加えて、尻上がりに調子をあげてきた元祖神童Sugarfreeが爆発しTORが決勝へと駒を進めています。

一方のZETAも優勝候補の名に恥じない力強い戦いぶりを見せました。Fearlessの魂溢れるウィンストンや南知多仕込みの阻害でチームを救ったFinnはじめ、個々の能力ではZETAが上回っていた場面も多々ありましたが、最終的には昨年のOWL MVP2人2の能力の高さと絶好調Sugarfreeのパフォーマンスの差が勝負の差として現れたように思います。

グランドファイナル

  • CRAZY RACCOON [4-1] TORONTO ULTRA

グループステージでの再戦となった決勝ですが、前回の試合ではCRが3-0でストレート勝ちしています。その結果どおり序盤からCRが王者らしい戦いぶりで試合を支配したものの、TORはMer1tを中心に予想外の抵抗を見せました。とくにMer1tに関しては、今大会で現役最強ハードヒットスキャンの座をLIPから奪い取ったと言っても過言ではないと思います。

CRはそのLIPはじめ出場したメンバー全員が期待どおりのパフォーマンスを発揮。第4マップのルナサピでは、ボール封じのソンブラ/バスティオン構成に出鼻をくじかれ130-131という激戦の末に今大会2つ目のマップを落としたものの(いずれもルナサピ)、最終マップとなったアイヘンバルデ後半の攻防は、選手個々の能力を越えたチームとしての完成度の高さと、OWというゲームの戦術的奥深さを知らしめる戦いだったように思います。

これでCRは6月のOWCS Dallas Majorに続き世界大会連覇となります。来月開幕するOWCS Koreaステージ2、その後のOWCS Asia大会、さらに年内最後の世界大会となる11月のDreamHack Stockholm Major大会含めたシーズン完全制覇も現実的な目標となってきたように思います。

大会MVPには決定的なダーツと阻害を幾度となく決めてきたShuが選出されています。OWL時代含めて、サイレントキャリーの名手として影のMVP候補と言われ続けてきましたが、Shuのキャリーなくして、今のCRの高度な戦術は成立しえないほどチームには不可欠な存在といえるでしょう。

今大会の感想

個人的には無印OW1時代も含めて、ここ数年の大会で最も面白いメジャートーナメントだったように思います。

選手のハイレベルなパフォーマンスは言うまでもありませんが、大会を楽しめたその理由の多くが、今大会独自に採用された「ヒーローBAN」システムにあることは間違いありません。

単にヒーローをBANするだけでなく、OWの競技性を考慮した独自のBANルールによって、多種多様な構成やこれまでにない戦術的駆け引きが生まれ、グループステージではエキサイティングな試合が続出しました。

統計をとったわけではないですが、メジャー大会では多くなる傾向にある3-0verwatchや4-0Wのような試合は少なく、完封試合であっても、見どころのある試合が多かったように思います。

OWCSキャスターAVRL「ヒーローBANは最高のルール変更」:

「ヒーローBANは、わたしがこれまで見てきた中で、競技フォーマットに追加された最高のルール変更だ。プロにおけるOWのゲームプレーをどれだけ向上させたかという点で、わたしの期待を完全に上回っている。はるかに競技性の高いゲーム、より多様な構成、より大きな戦術的な深み、わたしが望んでいたものすべてがここにある。」

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識者やコミュニティの反応を見る限り、今大会のヒーローBANについては肯定的な意見がほとんどで、今後のOW競技シーン、とくにトップレベルの大会では、Blizzardは正式実装を真剣に検討すべきルールであるように思います。

ゲーム内にヒーローBANが実装されていなくても、視聴者は十分試合を楽しめることは今大会で実証されました。大会と一般プレイヤーのゲーム体験を必ずしも同期させる必要はありません。

選手コーチにとっては大きな負担になるというネガティブな側面はありますが、少なくともプロの大会である以上、視聴者や観客が楽しめるという要素は決して無視できないと思います。

脚注:

  1. シーズンMVPがSomeone、グランドファイナルMVPがMer1t
  2. シーズンMVPがSomeone、グランドファイナルMVPがMer1t
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