開発チームによる「6v6」論争に対する見解が注目される中、昨年12月の開発スタッフのコメントが掘り起こされ注目を浴びています。
More insight on the 5v5 decision for #Overwatch2 🤔
Last December, Morgan Maddren explained that the transition from 6v6 was “purely for gameplay reasons” and emphasized that “it was not driven by a desire to reduce queue times.” pic.twitter.com/pGcOy87I06
— Overwatch Cavalry (@OWCavalry) July 13, 2024
昨年12月、開発エンジニアのMorgan Maddren氏は、オーバーウォッチが5v5へと移行した理由は、「純粋にゲームプレイ上の理由」からであり、「待ち時間を短縮したいという要求に答えるためのものではなかった」と、その理由を強調しています。
Average DPS queue times back in 6v6 were typically about 6 minutes (worse in KR). So I’d guess ~6min.
That said, the shift from 6v6 to 5v5 was not driven by a desire to reduce queue times. That was merely a happy side-effect. 5v5 was purely for gameplay reasons.
— Morgan Maddren (@SrslyPaladin) December 14, 2023
6v6当時の平均的なDPSの待ち時間は通常約6分ほどでした(KRサーバーではさらに悪化していますが)。したがって、当時のDPSの待ち時間は約6分でした。
とはいえ、6v6から5v5への移行は、待ち時間を短縮したという要求に答えるために始まったわけではありません。待ち時間が短縮されたことは嬉しい副作用にすぎません。5v5は純粋にゲームプレイ上の理由によるものです。
OW2以前に、開発が6v6から5v5へと移行することを決断した背景については、過去に何度か開発チームから明らかにされているので、ここで改めてそれらのコメントを振り返ってみたいと思います。
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以下は、オーバーウォッチ2のPVPベータテストが実施されたときの2022年4月27日付けの公式パッチノートからの抜粋です。
5VS5
クイック・プレイとライバル・プレイのロールキューでは、チーム構成がタンク1人、サポート2人、ダメージ2人に変更されます。クイック・プレイ クラシック、オープンキュー、そしてCTFやミステリー・ヒーローなどのアーケード・モードについても、チームの人数が6人から5人に変更されます。
各サイドのプレイヤーが1人ずつ減ることで、チーム全体の成功にとって個人の貢献がより重要になります。また、マップ上のプレイヤーが減ることで、ゲームプレイが前向きに、時には微妙に変化します。プレイヤーの展開できるスペースが広くなり、周囲で発生する視覚効果や音が少なくなることで戦況を理解しやすくなります。
ロールキューでタンクを1人減らしたことにより、すべてのタンクヒーローのプレイをよりインパクトのある楽しいものに作り直すことができました。この変更によって、すべてのロールにとってゲームプレイがより明確になり、マッチプレイがよりスムーズになります。
パッチノートをまとめると5v5移行の主な理由は以下のとおりです。
- チーム全体の成功にとっては個人の貢献がより重要になる
- マップ上のプレイヤーが減ることで、周囲の戦況を把握しやすくなる
- タンクを1人減らしたことで、全てのタンクのプレイをインパクのある楽しいものに作り直すことができた
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さらに2021年9月には、コミュニティマネージャーからOW2におけるタンクヒーローの方向性を示唆するポストが公式フォーラムに投稿されています。
- OW2ではプレイヤー全員が個々のパフォーマンスとポジショニングにより慎重になる必要がある。
- 暫定的ながらOW2のシールドはHPが減少、CDが増加している(威圧感を抑えるため)。
- コメントでは機動力のあるタンクのストッピングパワーやサポートがより前線の回復に専念できる趣旨の説明がなされている。
- 機動力の高いドゥームフィスト、ボール、トレーサーのようなヒーローに対する懸念については、OW2での再調整かナーフが必要かもしれない。
このポストについては長尺バージョンもあるので、興味のある人は当時のブログ記事を一読してみてください。
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2021年4月21日には5v5移行に関する開発Q&AがRedditで開催されましたが、以下はその当時の開発陣の回答まとめ記事からの抜粋になります。
OWのコアデザインであるヒーローのシナジーやコンボのいくつかが失われうことは残念だが、得られるものと失うものがそれに見合うかを判断することが重要で、今回のケースでは多くのプレーテストをこなした後に5対5で得られるメリットにはそれ以上の価値があると判断した。
タンクはその役割から他のメンバーの注目を浴びやすく、これによりミスが目立ち責任を押し付けられるため、タンクでプレーしたくないという意見も度々聞いている。
OW2ではプレイヤーにパフォーマンスを確認するためのベターなツールを提供したい。さらに、戦闘中のポジティブなプレーを褒めるような方法も検討している。
ここで注目すべき発言は上記のコメントではいかと思われますが、開発チームは様々なプレイテストを繰り返した結果、6v6廃止で失われるメリットよりも5v5で得られるメリットにはそれ以上の価値があったとしています。
また、2人制の当時からタンクはミスが目立ちやすいことで、その責任を押し付けられるという意見が存在していたこともわかります。
この他、当時の開発Q&Aでは、ヒーローリワークやマップのリワークなど興味深い意見も確認することができます。
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最後に2022年5月21日に6v6廃止と5v5導入が正式発表された当時の開発ライブ配信の記事を振り返ってみます。
オーバーウォッチ2に関する速報です。6vs6ルールは廃止されます。https://t.co/4EiBQBj40L
— だらだらオーバーウォッチ (@dara2_overwatch) May 20, 2021
以下、当時のブログ記事の抜粋となります。だらだらさんの記事はブログ移転前の記事なので今は確認することができません。
5対5変更の背景:
6対6では他の11人のプレイヤーが戦場で何をしているのか把握することが難しい。人数が減ることで全てがシンプルになり、周囲で起きていることを理解しベターな選択をしやすくなる。
減るのがタンクかDPSかに関わらず、ケアする必要のある対象が1人減ることで、個々のプレイヤーはよりチームに大きなインパクトを与えキャリーする機会も増える。
4対4や7対7も試し、さらにDPS4人の1-4-1制まで試したがこれは1度きりのテストでもう2度とやらないことにした。
5対5への変更はタンクヒーローの大きな変更調整を意味する。より攻撃的になりダメージ寄りでハイブリッド化する(具体的な変化は下のメモ参照)。これはタンキーではなくなるという意味ではなく、アグロ化しているだけ。いくつかのケースでは僅かにヘルスも増えており、Dvaはマトリックスも増量。単にミサイルを追加するだけでなく味方のプロテクト性能もアップしている。
マップも5対5向けに調整を施しより多くのカバーオブジェクトを設置している。
こちらもまとめると、5v5移行の背景には以下のようなものがあります。
- 人数が減ることで周囲で起きていることを理解しベターな選択をしやすくなる
- ケアする対象が1人減ることで、個々のプレイヤーはより大きなインパクトを与えキャリーする機会も増える
- 4v4や7v7も試し、さらにDPS4枠の1-4-1制も試した結果の判断
- 5v5移行はタンクの大きな変更を意味し、より攻撃的でダメージ寄りにハイブリッド化する。タンキーではなくアグロ化する
- マップは5v5向けに調整を施してより多くのカバーを設置する
この他、当時の開発ライブ配信でも、5v5移行化前の興味深い開発チームの考えを聞くことできます。
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以上、開発チームが6v6から5v5へと移行した背景理由を挙げてきましたが、これを見ても、開発チームからはとくに待ち時間の減少を目的としていることは、公には語られていませんでした。
にも関わらず、コミュニティの間では、5v5移行の最大の理由は待ち時間、とくにタンク不人気によるDPSの待ち時間対策という点で意見がほぼ一致していたように思います。
これには、待ち時間問題については、当時も盛んに議論されていた、OW1のプレイヤー人口減少といったネガティブな話題に繋がりやすいだけに、開発チームがその問題に触れたくないだけだろうという考えや、実際に影響力あるストリーマーやインフルエンサーが待ち時間の長さを嫌って、他タイトルに流れていったという事実も少なからずあります。とくにトップ層の待ち時間は冒頭にエンジニアが話していた6分ではすまない長さでした。
また、当時はOWLが視聴率低迷で苦しんでいたこともあり、オーナーサイドから視聴率アップに繋がるドラスティックな変更を求める意見があったことも事実で、「周囲の状況を把握しやすくする」という変更理由には、視聴者視フレンドリーにしたいという思惑もあったのではないかと思います。
とはいえ、開発チームが5v5を選んだ理由は、待ち時間対策以外にあったことも事実で、その点に関しては次回の開発ブログ「ディレクターの視点」で改めて明らかにされるのではないかと思います。
あくまでも個人的にな予想としては、ディレクターのアーロン・ケラー氏から、今後もメインのPVPモードとしては、5v5フォーマットを継続していく旨の理由などが説明されるのではないかと思っています。
仮に6v6フォーマットを採用するとしても、HP、シールド、バリアの一律弱体化など、オープンキューのようなグローバルな調整を施したサブモードとして試験的に導入されるのではないかと予想しています。