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[オーバーウォッチリーグ] OWL公式「今後も競技シーンの活性化に注力する」―せっかくなのでリーグの今後についてまとめみた

Overwatch League

昨日、フロリダ・メイヘムのグランドファイナル優勝で幕を閉じた今季のオーバーウォッチリーグですが、さきほどリーグ公式から今後のリーグ運営に関して声明文が出されています。

OWL 2023シーズン終了に伴い、我々はesportsプログラムに新たな活力を与えるというビジョンを構築することに注力していきます。詳細が決まり次第、さらに詳しくお知らせしたいと思います。

今シーズンが最後と見られているOWLですが、現行形式でのリーグ運営はほぼ不可能と見られる中、形を変えてリーグが存続する可能性がなくなったわけではありません。

「現行形式とは違う」と一言に言っても、その具体像はまだ見えてきませんが、これまでリーグの将来について、リークや噂含めた様々な情報がリポートされてきたので、それらの多岐に渡る情報をまとめてみることで、少しでもその将来像が見えてくるのではないかと思います。

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  • 今年7月に発表された決算報告において、BlizzardはOWL参加チームとのこれまでの契約取り決めを一部変更したことが明らかに。この変更に基づき、今シーズン終了後、OWL各チームは最新の契約内容について投票を行う。
  • 上記投票で2/3以上の賛成票(7/19票)が得られない場合は、少なくとも現行形式でのリーグ存続の可能性は消滅すると見られているが、それはリーグの完全消滅を意味するものではない。
  • リーグ存続が否決された場合は、各チームに対して600万ドルの違約金が支払われる。総額で1億1,400万ドルほどになるが、リーグの総収入はBlizzard全体の1%にすぎず、それ以上の損失もある可能性を考慮すると、現行のまま事業継続させるよりは遥かにコストを抑えることが可能。
  • 現時点でロサンゼルス・グラディエーターズは運営会社のThe Guardの解散により撤退が確実されており、中国勢の3チームも撤退の可能性が高い。さらに、厳しい財政状態にあるベガス・エターナルとロサンゼルス・ヴァリアントも追随する可能性は極めて高いと見られている。
  • リーグ最大のファンベースを誇るサンフランシスコ・ショックは、親会社のNRGがApex Legendsシーンから撤退したこともあり、ヴァロラントとLOL部門に注力しているとも言われている。今季ショックはNRG拠点ではなくホテル住まいが続くなど選手の待遇もよかったとは言えない。
  • 一方で、トロント・デフィアントとフロリダ・メイヘムといったいくつかのチームはリーグ継続に肯定的であり、後述するが、とくにトロントを所有するOverActive Media(OAM)はリーグ存続に向けて最も積極的な姿勢を見せている。
  • 元々OAMは以前からBlizzardに対してリーグ参入による損失補填を求めて法的措置をチラつかせていたが、既にリーグ参入費用の未払い分を免除することなどで合意。今回地元で開催されたOWLグランドファイナル共催もこの合意内容のひとつとされている。
  • グランドファイナル終了後、OAMのCEOは「我々が来年もグランドファイナルが開催できるよう全力を尽くすであろうことは皆さんご存知でしょう。詳細についてはもうすぐ」とコメント。さらに冒頭のOWLの声明に対しては「これはさよならではない。また会う日までの挨拶です」と返している。
  • 現在、このOAMが、反対票を投じる可能性の高いチームのフランチャイズスロットを買い取るのではないか?または、説得や売却斡旋などで反対を留まらせるのではないか?との噂もある。撤退予定のチームとしては、万が一リーグ存続が可決された場合、今後も運営を続けられるような体力はなく、目ぼしい買い手も見つからない状況では、「600万ドルをみすみす取り逃すくらいなら、OMAの安価な買収オファーや説得に乗ったほうが賢明」という選択肢も十分あり得る。OAMとしてもフランチャイズスロットを転売できるという見込みが全くないとは言えない。
  • リーグの将来が不確かな中、OWLはリーグが来季以降も存続した場合の可能性に備え、海外のesports大会運営組織と話し合いを行っている。その候補がサウジアラビア系企業が所有しているESL FACEIT Groupと、既にアジア地域でOWLのプロダクションパートナーでもあるWDG Espoprts。
  • これらのサードパーティが独自ブランドでリーグを開催するのか、OWLやその他の大会名で開催するのかは現時点では不明だが、OWLを統括するSean Miller氏は今年7月のインタビューで、2024年以降のリーグ形式のヒントとして、「Overwatch APEX Season」を引き合いに出している。同大会はOWL以前に韓国で開催されていた当時最も人気のあった大会。また、別のインタビューでは、「よりよいエコシステムを確立していくためにはチーム数の減少も否定はしない」と、将来的なリーグ規模の縮小も示唆している。
  • 余談だが、元OWLキャスターで現在はVCTキャスターとして活躍するBrenもグランドファイナルのミラー配信中に、「サードパーティだったり韓国に戻るみたいな噂を聞いた」とコメントしている。
  • Activision Blizzardは今年7月にOWL運営スタッフを含むesports部門スタッフを大量解雇している。上記のリークや噂を含めると、仮にリーグが存続したとしても、Blizzardがコストの嵩むリーグ運営を自ら行う可能性は低く、サードパーティに委ねるのが現実的。
  • 仮にリーグ存続が可決されたとして、現行OWLのようにフランチャイズ制が継続されるのか、APEX Seasonのようにオープントーナメント2になるのかはまだわからない。後者の場合でもフランチャイズチームを優先出場させることで、フランチャイズであることの優位性を保つことは可能。
  • 一方でリーグ存続が否決されたとしても、サードパーティ主催によるオープントーナメント開催が可能であることは言うまでもない。
  • リーグ存続の如何に関わらず、OWLがこれまで敷いてきた「ホームタウン制度」は廃止される公算が高い。「ロサンゼルス」や「上海」といった地名がフランチャイズやチーム名から排除されることで、チームは「Cloud 9(ロンドン)」、「NRG(ショック)」、「Bilibili(スパーク)」といった独自ブランド名を使うことが可能になり、さらに、これまでOWLに関わっていなかったチームが再びOW競技シーンに戻ってくる可能性も生まれる。
  • 現行形式のOWLが終了することで、今後は大会運営者や参加チームは、より柔軟にスポンサー獲得が可能になると期待されている。これまではリーグスポンサーとの兼ね合いから厳しい制限があった。
  • 「はっきりさせておきたいことは、オーバーウォッチは2024年以降も競技シーンのエコシステムにコミットし続けるということです。私達はプレイヤーとファンを最優先にグローバルな競技シーンの活性化を目指しています」

    OWLを統括するSean Miller氏は今年7月のインタビューでこのように答えており、冒頭のリーグ公式声明も合わせて、少なくともBlizzardが今後もOW競技シーンの活性化に向けて注力していくことだけは期待してもよいかもしれない。

脚注:

  1. APEX Season 3までは招待枠あり。基本はオープン形式だが、昇降格制を採用。
  2. APEX Season 3までは招待枠あり。基本はオープン形式だが、昇降格制を採用。
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